こんにちは、普段は流体解析を担当している鈴木康平と申します。
今回は流体力学と超弦理論の論文の紹介をして行こうと思います。
一般的に相対論的力学(光速に近い)と非相対論的力学(光速より遅い)の2種類があります。実は血流解析で扱っている流体力学はニュートン力学の範囲になっているため非相対論的流体力学と呼ばれるものになります。一方例えば素粒子などの光速に近くでの流体運動を取り扱うものを相対的流体力学とよばれます。相対論流体力学でもっともよく扱われるのがクオークグルーオンプラズマ(QGP)です。
QGPとは高温高密度状態でクオークとグルーオンからなるプラズマ状の物質になります。低温低密度では、クオークとグルーオンは原子核の中で閉じ込められているため取り出すことはできません。ゼロ温度では通常の核子の密度の10倍程度の高密度状態で、多体効果によりその系はクォークとグルーオンからなるガス状態になると予想されています。理論的には完全流体を仮定した相対論的流体力学のモデルとQGPの実験結果が矛盾ないことが示されています。
一方超弦理論の中でAdS/CFT対応(ゲージ重力対応)と呼ばれる理論があり、歴史的には1997年にJuan Martín Maldacena によって予想された理論です。
簡単に説明すると理論Aと理論Bがあったときに理論Aで解けない問題が理論Bを使っても解けるいう考えをしており、この考え方を数学では双対性といいます。 Maldacenaが予想した理論では素粒子の理論(ゲージ理論)と一般相対性理論(重力理論)と対応するという予想になっていて、素粒子論の問題が一般相対論に置き換えて計算できるものになっています。
しかしながらいまだにAdS/CFT対応は数学的な証明は与えておらず予想でしかありませんが流体力学や超電導の理論においてAdS/CFTを使って計算されている試みもあります。流体力学では、重力理論と対応するという予想(流体重力対応)といった理論も研究されています。
この論文では、AdS/CFT対応を使った流体力学の計算例を紹介されており、流体力学と一般相対論との理論的な対応やブラックホール解や時空解を使うと熱平衡状態の熱力学量などが計算できることが紹介されています。
https://core.ac.uk/download/pdf/39295804.pdf