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4D Flow MRI やCFD、VFMなどを研究テーマとした研究会「血流会」では、医師、獣医師、工学系研究者など分野を問わず様々な研究者による活発な議論が繰り広げられています。

 

書籍のご紹介

『Advances in Hemodynamics Research』

編集者: 板谷 慶一
出版社: Nova Science Publisher Inc
出版年: 2015年
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用語解説

 

壁面せん断応力 WSS (Wall Shear Stress)

 

WSSは、流体力学分野で用いられる、流れによって物体表面に加えられる作用の一つですが、近年、循環器生理学の領域においても、血行動態を表す指標として研究されています。端的には、粘性流体である血液が血管壁を“擦る力”と表現でき、以下の定義式により計算されるベクトル量です。

このWSSが高いと血管内皮細胞の予後に影響し、プラーク破綻を起こす1)とされています。 逆にWSSが低すぎると、プラーク進展のリスクが高まる2)とされます。

 

OSI (Oscillatory Shear Index)

 

OSIは、WSSの時系列的変化(拍動)による「ゆらぎ」を定量化したもので、以下の式で定義されるスカラー量です。一心拍分のWSSからOSIを算出することで、局所的に流れが乱れてWSSの変化が大きくなっている箇所を可視化することができます。
このOSIが高いと活性酸素が算出され、血管内プラークの成長が促進される3)とされており、特に胸部大動脈瘤の研究4)や、動脈硬化進展やプラーク予後などの冠動脈疾患の研究などで用いられています。

 

血流のエネルギー損失 EL (Energy Loss)

 

水や血液は「粘性」と呼ばれる性質を持っており、比較的流れが乱れている心臓内部や大動脈などの一部の血管では、粘性摩擦のためエネルギーの損失が生じます。もしこの血流エネルギー損失が健常時より大きくなると、その分全身に血液を送るためのエネルギーは余分に必要となるため、心臓にかかる負荷が増大します。心臓を自動車のエンジンに例えるなら、通常では効率良くエネルギーを車体に伝えることができまていますが、何らかの原因でエネルギーが騒音や熱に変換されて損失が発生した場合、燃費が悪くなり多くのガソリンを必要とします。

近年の研究では、心臓弁膜症において、血流エネルギー損失が生存率に影響している5)ことが報告されています。また、小児先天性心疾患においても累積的なエネルギー損失が将来の心不全リスクを高める6)と考えられ、注目されています。

小児先天性疾患の血流エネルギー損失
(白色・黄色の箇所で損失大)

さらに、拡張型心筋症の研究7)においても心負荷を評価する指標として活用されています。下図左側の心不全の左心室が、内服治療により右図のようにエネルギー損失が低下していることがわかります。

拡張型心筋症において心負荷を定量的に求めることができれば、診療ガイドラインに則った治療介入となる前の「心負荷が増大している」時点で、治療を開始することも可能になります。このように、従来の血行力学的な指標としてだけではなく「心負荷マーカー」として、エネルギー損失は予測治療に繋がる新しい診断基準になると期待されています。

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シミュレーションFFR (Simulation Fractional Flow Reserve)

 

冠動脈の虚血評価に用いられるFFRは、狭窄前後の圧を計測して算出されます。しかし、弊社の血流解析シミュレーションでは、流体力学の支配方程式を解くことで、血液の速度場と圧力場をシミュレートすることができます。このためカテーテル検査を必要とせず、非侵襲的にFFRの分布を算出することが可能です。

弊社の血流解析シミュレーションでは、血管拡張薬なしに冠動脈虚血の重症度を評価する際に用いられるiFR(instantaneous wave-Free Ratio)の導出も可能です。上記のFFR同様、造影CT画像の情報のみから血圧をシミュレーションします。解析をご依頼頂く際にお申し付けください。

参考文献

1) Fukumoto et al., Journal of  the American College of Cardiology Vol. 51, No. 6, 2008
2) Chatzizisis et al., Circulation 117:993-1002, 2008
3) Chatzizisis et al., Journal of the American College of Cardiology, Vol. 49, No. 25, 2007
4) Numata S et al. European Journal of Cardiothoracic Surgery. 2015
5) Bahlmann E et al. Circulation 127:1149, 2013
6) Itatani K et al. J Thorac Cardiovasc Surg. Vol. 144:130, 2012
7) Nabeta T et al. Euro Heart J 2015;36(11):637.